綿が高くなるってことは5年ぐらい前から予想していた、だから布好きな弥生が良質な綿布をこれでもかっていうぐらい買うのを笑ってみていた、買い続ける弥生、布の山が大きくなることはあっても減っていかない、売らないって言ったほうがいい・・・(笑)
いい布は人を選ぶんだから弥生の近くにいたいんだろう・・・(笑)
この頃じゃあ、糸は細くなるし綿糸にナイロンを混ぜたりして綿100パーセントと言って売っているし、刺繍もマシンで手刺繍風味をつけて仕上げている・・・
本物のいい布を探すのは少し大変になったのかな、それでも商人じゃあない俺は引きが強いらしい、店先に山のようにどうでもいい布を積み上げている脇を通って奥の薄暗い棚を見る、下の方に俺が大好きな黒檀の実で染めた布があった、上に積んである布が重い、力任せに引き抜いていたら顔見知りの青年が手伝ってくれた、テーブルで長さを計ったら10メートルぐらいしかないので、すかさず「オール!」と言って買う、青年が何か言ってる、俺にはわからないので長さを計っている女性が「確かじゃあないけどまだあるかもしれない・・・」と言うので、「アイウオントバイ!」青年が奥の倉庫に行って布のロールを背負って来た、ほんの少しの色違いで本当にいい、昔からこの布を追い掛け回して少しでもあれば買う、服になっていたらデザインが気に入らなくても買っていた布だ・・・
どれだけ欲しいって聞かれたので、「オール」って答えた・・・
女性が計ってくれたら30mあった、また不良在庫と言われる宝物が増えていく・・・
(黒檀の実で染めたざっくりとした風合いの布で茶色、その濃淡は些細なことでどの濃さの色でも使い込むほどに素晴らしい布になる、20年前初めて買ってトラックの運転席を包んで使っていた、日に焼けた所が白くなっていく汗みどろになった作業着で擦り切れていく経過の時間が畳1枚分の布に刻まれていく、激しすぎた熱い時間ばっかだった人生、一枚の布・・・)
弥生が飲みたがっていたビールを買いにラオスへ行って、これまた弥生が欲しがっていたシルクのロンジー(男女が腰に巻く布、畳み1畳ぐらいの大きさか・・・)を買いにミャンマーへ行ってきた・・・
昨日帰ってきたら弥生が介護の手もなかったのに無事でいてくれたのでほっとした・・・
今朝、布探しにガードしながら歩いていたら布屋でもなさそうなのに布のロールが無造作に積み上げられてる店に出くわした、天然の染料で染めた糸で手織りしてある布だと遠めで見てすぐにわかった、近づいて行く、店の男性が布を少し切って燃やす、天然の綿か化学繊維か俺たちにわかりやすいように教えてくれた、太いロールだったので弥生が躊躇する、だけど俺が主張して決める、「オール!」
60メートルあった・・・
ホテルに運んでまた別のところへ出かけた、今度は弥生が決めていく、5ヤード、5ヤード、10ヤード、10ヤード、20ヤード、これって45mあるってことで、弥生のへこんだ買い物意欲が少しは戻ったってことかな・・・(笑)
扱うもの、愛しいものに男は愛情と利益のどちらを優先するのか・・・
利益を優先すると愛情はへこむけど愛情を優先しても利益はへこまない・・・(笑)
おやすみなさい・・・いい夢を・・・
チェンマイにて・・・